プロジェクトの紹介

中・大型リチウム二次電池の健全度診断器の開発・販売

中・大型リチウム二次電池の健全度診断器の開発・販売

インピーダンス特性計測によるリチウムイオン電池の健全度診断及びその装置の開発

記載日: 2025年2月18日

背景

車載や定置型用リチウムイオン二次電池(LIB)の安全な使用のために、その健全状態・劣化度合いを簡便に高精度で評価可能な新しい診断測定装置の出現が望まれています。この市場ニーズに応えるため、2012年にエンネットの“LIB診断”に関する開発プロジェクトが開始されました。その新技法開発は、平成30年度NEDO委託事業『新エネルギーベンチャー技術革新事業(燃料電池・蓄電池)』や、『東京都次世代イノベーション創出プロジェクト2020助成事業』などの支援を受けて実施することができました。その成果の一部の概要を下記に紹介します。

高速パルスおよび交流インピーダンスの特性データの利用

交流インピーダンス法による電池内部の状態検査では、正極、負極間のキャパシタと抵抗(下図参照)の変化を検出できます。充放電応答曲線からは,陰極表面と陽極表面の電荷密度が変化する現象しか検出できないのに対して、インピーダンス特性計測では,図のように両電極と電解質での変化をも検出可能です。

電池の擬似等価回路各要素の具体的イメージ
電池のインピーダンス特性を理解する擬似等価回路各要素の具体的イメージ

まず、プロジェクトでは、これまで診断法として複雑さのために敬遠されてきた交流インピーダンス測定法の新しい手法で、“多重交流インピーダンス評価法”と称する開発を推進して測定時間の短縮化を図り、さらに、モジュールやその構成単セルの同時測定を実行する計測の多チャンネル化及び計測の全自動化を図りました。このことにより、モジュール特性の計測時間が大幅に短縮でき、未劣化や劣化電池の各種特性に関する計測値のDB化、電池劣化とインピーダンス特性との相関性の把握、その相関性の機械学習法に依る劣化度合いを評価するアルゴリズムの有効性を考案してきました。

該当計測システムでは、自動充放電の動作も兼ね備え、かつ高速パルス過渡応答の観察およびインピーダンススペクトル観察を同時に行える計測システムを構築しました。

従来技術においては、印加パルスから得られたボルタモグラム応答(過渡応答)から抵抗成分が計算され、電池の劣化診断に用いられてきました。ただし、直流法と交流法で求めた結果には、大きな相違がありましたが、両者の相違差の原因は解明されずの状態でした。

よって、まずはこれまでの直流測定法での改善、特に印加電流パルス法で観測される減衰曲線のマイクロ秒から数秒までの時間帯での精度、解析評価に用いる擬似等価回路の選択、フィッティングおよび評価ソフトウェアの設計上の課題など、従来技術を見直し、その技術に改善を加えることとした。直流パルスの過渡応答(CP)の高精度な計測を実現するために、LIB特有の電位ヒステリシス現象および熱変化の影響を軽減する計測条件の設定を行った。パルスの超高速印加技術や高速領域での計測条件をハードウェアとソフトウェアの両面で改善して、インダクタンス(L)成分による影響を最小限とした抵抗値(R0: 電解質の抵抗成分)の算出が可能とした。パルス過渡応答波形の重畳ノイズを除去するための変化点検出機能および平滑化機能の開発を行い、真の応答信号を抽出するためのデータ処理法をも確立した。このようにして、直流法と交流法で求めた結果には、大きな相違がないことを明らかにしてきました。

つぎに、計測システム開発では、温度および充電率状態(SOC)を自動で変えることはもちろんのこと、単セルやモジュールの各種特性を同時に計測できる多重測定システムを構築してきた。こうして、高速パルス過渡応答の観察とインピーダンススペクトル観察が同時に計測でき、大幅な測定時間の短縮を行った。この計測システムを複数台導入して、弊社では、メーカーやユーザーのLIB特性の評価・解析を受託しています。

一般には、交流インピーダンス特性は、電池反応の理解に大変有用な測定パラメータ因子であることは広く認められてきていますが、その測定には、高度な測定技術が必要です。特に、電池と計測器との間には、新たなインピーダンスやノイズの発生源を除去するための特殊な測定端子や測定環境が必要となります。一方、パルスを用いた直流法の測定では、電池容量の出し入れのために接続されている電圧、電流の外部端子をそのままで使用できる可能性があり、計測の簡易性には優れています。

よって、弊社では、LIB特性の評価法の開発の次のステップとして、定電流の高速パルスアナライザーの開発にその目標を定めた。一般に、汎用の充放電機では、その定電流パルスの立ち上がりは100ミリ秒以上であり、印加パルスの過渡応答から得られる情報は、LIB動作でのLi+イオン拡散過程が関与するワールブルグ要素からの応答であり、LIBの満充電容量の減少と直接関係がある正極や負極の特性の時間変化を観察してものではなかった。これらの変化(Rn&Cn; n=1~5)を観察するためには、マイクロ秒から数十ミリ秒の高速時間帯で過渡応答の現象を明確に観察できる装置が必須なために、高速クロノポテンショグラムを観察できる装置開発を行った。

パルス過渡抵抗曲線と紐づけられる擬似等価回路の各因子
パルス過渡抵抗曲線と紐づけられる擬似等価回路の各因子
電流パルス印加による各パラメータ因子の時間に対する過渡応答
電流パルス印加による各パラメータ因子の時間に対する過渡応答

開発したパルスアナライザーでは、パルスの過渡応答から電池反応関連の等価回路パラメータ値を求め、該当値と電池劣化との相関性を機械学習した診断アルゴリズムを考案して、電池劣化度を短時間で数値評価できる新規方法を開発した。ここでは、外部印加の定電流パルスから得られるクロノポテンショグラム応答(ガルバノスタテック応答とも呼ぶ)を、測定対象電池の電池反応と関連する最適擬似等価回路に適用して、その回路のパラメータ(Rn, Cn, L)値を求めます。求めたこれらの値を電池特性の健全度(以後は劣化度(SOH)と称する)との関係でデータベース(DB)化します。該当回路パラメータのDBを用いた機械学習法により診断アルゴリズムの式を確立できます。本手法により、被測定電池への高速印加パルスにより、電池劣化度合いを数値表示の一秒以内で求めることができます。該当提案の新技術の妥当性は、該当回路パラメータ値を用いてインピーダンス応答に変換したナイキストプロット等(ボード線図プロットを含む)のフィッティングで調べることができます。市販のインピーダンス測定装置により別途求めたインピーダンス測定との比較を行い、解析精度を検証できます。2018年3月末までに、汎用電池数種類について、弊社で開発したアルゴリズムでSOH推定精度5%以内を達成できることを見出しました。

本装置では、高速パルス応答の計測データの正規化を図り、擬似等価回路パラメータ変換をせずに、その生データベースと電池劣化との相関性を機械学習した診断アルゴリズムを搭載して、劣化度を秒速で数値評価できる機器であります。本装置は、その計測対象が単セル(5V)やモジュール(80V)でもできるように仕上げ、2024年夏より販売を開始いたしました。

さらに,この装置には従来外部から検出が困難とされていた、充電時に負極界面の金属Li析出をも高速で観察できる新規考案のソフトも搭載されています。

診断器の原理

該プロジェクトのリチウムイオン電池(LIB)の診断法は、従来の固定時間の抵抗変化を計測する直流法と異なり、インピーダンス特性やパルス過渡応答特性の計測を行ない、電池の健康・安全状態(SOH)を擬似等価回路の細分化した抵抗要素とキャパシタ要素で高精度・高速に判断する手段をとっています。本開発装置では、最新のLIBに関する特性のデータベースを構築し、それに基づき劣化パターンとの関係式やテーブルを作成している。そのアルゴリズムからSOH/SOC/温度を判断するソフトを搭載されています。すなわち、電池特性の逐次状態を詳しく把握する診断法が本装置に搭載されています。

製品の特徴

現在使われている手法は、LIBの詳しいSOHを把握するには不十分であります。そのため、LIB組電池の不具合への対処は、不具合を発生した後か、あるいは充電回数および走行距離に応じて予防措置として早めの段階でバッテリーを交換することしかできていない。また、電池容量(SOC)の推定では、電流積算法や電圧観察法で推定するという手段を取っており、周辺環境や走行条件によって大きな誤差(±20%程度)が生じてしまう。ここで紹介の製品では、セル単位でインピーダンス情報に基づき、詳しいSOHや正確なSOCを検出できるため、LIB組電池を寿命(SOL)直前まで安心して利用することができるようになります。電気自動車の信頼性が向上するだけでなく、無駄なバッテリー交換が避けられ大きなコスト削減にもつながります。すなわち、入荷セルおよびある期間使用されたセルについて本診断を行い、安心して使用することができます。このことにより、充填あるいは廃棄電池の数を減らすことができ、CO2 削減を含む環境負荷を低減化できます。

名称

本製品は、「Battery Pulse Analyzer (BPAシリーズ)」と名称しています。

以上